「コストカッター」の異名をとるドイツ人の新社長マーティン・イェッター氏の下、日本ＩＢＭが、またぞろ新手の「首切り策」に踏み込んでいる。 「業界における新たなリストラ策の毒見役」を公言してはばからない同社の首切り手法の苛烈さは、すでに本誌昨年十一月号が報じた通りだ。しかも、同社の首切り手法は業界に先駆けて導入され、他社の追随を招くという「雛型」としての色合いが強いという懸念も重ねて指摘した。だが、その直後、昨年十二月の東京地裁による「合法判決」を受け、いまや同社は大いに勢いを得ているかのように次々と「型破り」な首切り策に手を染めている。

極めて異例の強制的な指名解雇

　五月二十三日、半導体設計部門の全社員は、担当役員からこう告げられた。「この部門は九月末で閉鎖です。それまでに身の振り方を自ら考えてください」。 　同部門はこれまで、ソニーのプレイステーションや任天堂Ｗｉｉ、各種事務機器の頭脳ともいえる最先端の半導体プロセッサーの開発で実績を上げてきた。そうした技術者たちが、いきなり突き付けられた「解雇通告」だった。 　もっとも同社は・・・