トヨタの姑息な「広報戦略」
危機を直視できない「章男経営」
2012年10月号
二〇一二年九月六日、中国・四川省成都市で開催された自動車会議で、トヨタ自動車の新美篤志取締役副社長が「一五年をめどに中国販売を前年実績の二倍に当たる百八十万台に増やす」と宣言した。「世界生産一千万台」の計画を大々的にぶち上げた一三年三月期の決算予想でも明らかにしなかった「隠し球」―。それを尖閣諸島の領有権問題などで日中関係が険悪化する最中に、なぜわざわざ明らかにしたのかと、首をかしげる向きも多かった。
実は、この発表のわずか三日前、トヨタの八月の中国新車販売台数が明らかになっていた。それによると震災の影響で低迷していた昨年同月をさらに一五・一%も下回る、約七万五千三百台という惨憺たる結果だったという。
にもかかわらず、このニュースはなぜか、ロイター通信など一部メディアが現地発の情報として小さく報じただけだった。当然ながら、直後の隠し球によってそのニュースは見事にかき消されてしまった。