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政治

《罪深きはこの官僚》戸谷一夫(文部科学省研究開発局長)

地震研究予算を脅し取った主犯

2012年10月号

「国民を脅して予算を奪ったようなものだ」
 関東の大学で研究をする地震学者の一人はこう吐き捨てた。

 九月一日の防災の日に前後して、内閣府は相次いで「南海トラフ巨大地震」についての被害想定を発表した。新聞各紙は一面で「死者三十二万人」とセンセーショナルに報じた。地震学者が続ける。
「東日本大震災後に『敗北』を認めたはずの地震予知ムラの構造は全く変わっていない」

 南海トラフの恐怖を煽ったのは、予算編成時期。文部科学省は、国民が地震の恐怖で震え上がった後に二〇一三年度の概算要求をした。

 霞が関で地震関連予算を持つ省庁は多く存在するが、直接的に地震を研究し最も多くの予算を得ているのは文科省だ。学者側の総本山が東京大学地震研究所だとすれば、官僚側における地震ムラの本丸は文科省研究開発局である。つまり、「今回の『予算恐喝』の戦犯は局長の戸谷一夫」(大手紙科学部OB)なのだ。

 研究開発局は、地震・防災研究等のほかに宇宙、海洋、原子力などの分野の研究を所掌する部局で、旧科学技術庁の流れを・・・