《土着権力の研究》福井県 県商工会議所会頭・川田達男
原発城下町の「陰の城主」
2012年10月号
原発銀座―。高速増殖炉「もんじゅ」を含めて全国最多の原子炉十四基を抱える福井県に、かつて「繊維王国」と呼ばれた面影はほとんどない。江戸時代、藩の財政的都合からこの地に根付いた繊維業は戦後の高度成長時代を経た後、斜陽の道を辿ってきた。それでも「糸屋」「機屋」は地元財界において一定の発言力を持ってきた。地元繊維業界関係者が語る。
「原発再稼働のキーマンとなり、陰の知事と言われる川田達男が繊維屋であることは土地に染みついた怨念のような縁だろう」
北陸の地元企業に過ぎなかったセーレンを東証一部上場にまで伸し上げた立役者は誰かと問われれば、十人が十人「川田」の名を挙げる。同社会長、社長、最高経営責任者を兼ねる川田は現在、県商工会議所の会頭を務め「福井の財界天皇」(地元紙記者)と呼ばれる。
「ただし、川田は地元繊維業者を束ねたわけではなく、セーレン再生という成果と、現知事との個人的?がりで地位を手に入れた」
前出繊維業界関係者はこう語る。冒頭に述べた通り、現在の福井の一大産業は原発である。県の統計によれば、県内全産業のうち・・・