イスラム「宗派対立」の本質
「殺し合い」は止められない
2012年10月号
今世紀は9・11事件という衝撃で幕を開けたが、この人類史上稀に見る大事件に端を発した米国の対テロ戦争は、ソ連崩壊後の共産主義陣営に代わる新たな攻撃目標としてイスラム過激主義を据え、その暴力を現代の欧米キリスト教社会を主軸とする世界秩序に対する挑戦と位置づけた。そうして、起こされたイラク、アフガニスタン両国における熱い戦争。見えない敵相手の不毛な戦争に疲弊した米国は、オバマ政権にこの泥沼からの撤退を最優先課題として託した。オバマ大統領は、イスラム教徒の息子と揶?されながら、イスラム社会との融和姿勢を打ち出して両国からの撤兵に力を注いだ。
米国はイラクに選挙という民主的な方法で選ばれた政府を「プレゼント」し、治安維持のためのノウハウも伝授して去った。アフガニスタンからの完全撤退も間近である。筋書き通りであれば、中東のイスラム教徒は「悪魔」(=米軍)の退散を喜び、同胞が力を合わせて社会の開発に向かうはずなのに、そうはならなかった。米軍は去ったが、テロは残ったのだ。
外敵を退散させる手段として、「神懸かり的」に正しく高貴な行為であった筈のテロの矛先は、米国でなく、スンニ派とシ・・・