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南欧支配を強めるドイツ

独善的政策でユーロ圏を歪める

2012年10月号

 ユーロ圏の債務危機は、欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁が、重債務国の国債を流通市場で無制限に買い取ると表明して、何とか小康状態を得た。ドイツ国内では「最悪の経済政策」と評判が悪いが、欧州金融界ではドイツこそ最大の受益者で、南欧支配はさらに強まるとの見方が有力だ。ドイツ中心の金融・財政政策は南欧ばかりか欧州全体を締め上げている。

改革を命じて歳出を締め上げる

 ドラギ決定の翌日のドイツ各紙は、強烈だった。「債務国に白紙小切手」「暗黒の日到来」(ビルト紙)、「越えてはならない一線を越えた」「(南欧の)デタラメ経済運営に報酬を与える、めちゃくちゃ政策」(南ドイツ新聞)など、各メディアはこぞって、これがユーロをダメにする一里塚であると攻撃した。「泥棒に追い銭」論の大合唱で、ドラギ総裁はあまりの悪評ぶりに、「もし招かれるのなら」独下院で弁明してもいいと申し出たほどだった。  だが、「ドラギ=悪役」論は、ユーロ圏の深層の動きとかけ離れたものだ。 「ドイツの世論は、『ギリシャをユーロから追い出せ』と息巻いているが、一番困るのはドイツ国民・・・