中東「反米動乱」にお手上げの米国
「イスラム冒涜映画」の重い後遺症
2012年10月号
アメリカの中東政策が、イスラム教の預言者ムハンマドを中傷する映画により、破綻の淵に追い込まれている。オバマ政権は、ムスリム同胞団系の「穏健派」との関係を模索してきたが、より過激な「サラフィスト」の台頭に加えて、アラブ全域での反米感情の高まりで、努力は水泡に帰している。
同時テロ事件の記念日、九月十一日に始まったイスラム圏での抗議デモ。エジプトのモルシ大統領は、カイロの米大使館に暴徒が乱入した事件から一週間以上沈黙し、オバマ政権を苛立たせた。さらに、ニューヨーク・タイムズ紙と会見して、爆弾を炸裂させた。
「(アメリカの歴代政権は)パレスチナ人の問題で、とてもあからさまに、偏った立場をとってきた」と、米国のイスラエル偏重を批判し、イスラエルとの和平協定順守は、米国がパレスチナ人国家創設に動くことが条件であるとのメッセージを送った。モルシ大統領は国連総会出席のための訪米で、オバマ大統領に直接伝えるつもりだったが、米政府側が微妙な時期の、予測しにくい相手との会談を嫌がり、実現しなかった。その代わり、モルシ大統領は世界中に「アメリカの振り付けでは動かないぞ」と公言したのだ。
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