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社会・文化

「治らない」うつ病が増えてきた

社会・経済に深刻な打撃

2012年9月号

 今、うつ病に関する考え方が大きく変わりつつある。最近、「新型うつ病」という病名を、雑誌や新聞の記事などでよく見かけるようになった。これは医師でもあるタレントの香山リカさんの造語で、仕事に対して意欲がなく、うつ病として休職中であるにもかかわらず、海外旅行に出かけたり、自分の趣味の活動には積極的だったりする人があてはまるという。  結論から言えば、「新型うつ病」はうつ病ではない。この造語は、一部の若者における特徴的な気質を表しているかもしれない。しかし本来のうつ病とは、憂うつ感、意欲の障害などの精神症状が持続して出現するものである。短期間のうちに精神状態が変化する新型うつ病なるものは、創られた病だ。社会のウケを狙った言葉遊びは、うつ病に対する誤解を助長しかねないという点で罪深い。

「これ以上治療法がない」

 新型うつ病よりも遥かに深刻で社会的にも重要なのが、「慢性うつ病」である。精神医学における常識では、うつ病は治る疾患とされてきた。医師はこれまで、うつ病患者に「必ず治る」と約束してきた。しかし、それは誤りであった。治ることのない慢性うつ・・・