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経済

スズキ「インド暴動事件」の深層

「ガリバー」の傲慢が原因

2012年9月号

「あまり心配していない」。スズキを率いる鈴木修会長兼社長は昨年六月、業績見通し記者会見でインド工場の労使紛争についてこう述べていた。だがその後、スズキのインド子会社マルチ・スズキ・インディアにおける労使問題は雪だるま式に膨張、もはや足元から玉座は崩壊しつつある。シェア五割を握ってきたガリバー、スズキ。その「驕り」が、あの七月十八日夜の大惨事をもたらし、さらに「新たな危機」を引き起こそうとしている。

「極左陰謀説」で被害者装う

 現在、捜査は続いているが、「暴動は事前に準備された陰謀」とする説、「暴動は突発的に起きた」とする説、大別するとこの二つの説が存在する。  前者の場合、「極左勢力」によるとするものが一定程度有力説として上がっている。「これは極左勢力が仕組んだものだ」。マルチ・スズキのバルガバ会長は事件翌日、テレビ番組でこう発言した。この発言は注目を浴びたが、「労使紛争で殺人が起きたから、極左勢力というのは短絡的すぎる」(現地日系企業関係者)など周辺の多くは首を傾げている。  本当にこの線はあるのか。極左の研究者に聞けば「可能・・・