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経済

トヨタの危険な「一千万台」計画

内実は章男社長の「実績づくり」

2012年9月号

 またぞろトヨタ自動車で生産台数至上主義の「病」が再発している。八月三日に発表した二〇一二年の世界生産計画で、自動車メーカーでは史上初となる「一千万台超え」を目指すと高らかに宣言したのだ。再び世界一への「野心」をあらわにしているトヨタ。だが、わずか三年前に前経営陣の拡大戦略を「トヨタの原点を見失わせた」と真っ向から否定したのは、現在、大号令をかけている豊田章男社長その人にほかならない。なぜ、トヨタは再び「拡大路線」にハンドルを切ったのか?

糾弾した前経営陣の路線を踏襲

「台数目標は口にしないようにしているが、目標がないわけではない」と言及していた章男社長の「目標」が、ついに明らかになった。トヨタにダイハツ工業と日野自動車を含めた一二年のグループ世界生産計画は過去最高の一千五万台。トヨタが八百八十七万台、ダイハツと日野が合わせて百十八万台を生産する。一千万台達成のカギとなるのは米国市場の動向。「一二年初めに一千三百万台程度と予想していた米国新車販売が思いのほか好調で一千四百三十万台まで伸びそうだ」と、トヨタの伊地知隆彦取締役専務役員はソロバンを・・・