ノキアはなぜ「急失速」したか
IT産業「栄枯盛衰」の典型例
2012年9月号
フィンランドの首都、ヘルシンキに隣接する街、エスポー。その中心部の運河沿いに巨大なガラス張りの建物がそびえ立っている。世界の携帯電話市場に君臨してきたノキアの本社だ。内部の巨大な吹き抜けには天気のよい日には燦々と陽光が降り注ぎ、最先端のIT企業のイメージそのままに訪問した人々を圧倒する。
だが、今、ノキアの経営には暗雲が広がっている。今年第1四半期の決算は売り上げが前年同期比二六%減の七十三億五千四百万ユーロ(約六千億円)、営業利益は十三億四千万ユーロ(一千百億円)の赤字となった。携帯電話出荷台数(ガートナー社調べ)でも、ノキアは八千三百十六万台にとどまり、八千六百五十六万台のサムスン電子に首位の座を奪われた。一九九八年から維持してきた携帯電話のトップメーカーから転落したのだ。「ギャラクシー」シリーズが好調なサムスンは四月以降もシェアを伸ばしており、さらにアップルはiPhoneの新製品を九月に発売する予定で、シェアアップは確実。携帯電話における「ノキアの時代」は終焉しつつある。