「移民の国」シンガポールの苦悩
「国民」の少子化は止まらず
2012年9月号
「八月九日は国民の義務を果たす日。花火やパレードの後の話だ。子供をつくろう」
シンガポールの独立記念日に合わせて、菓子メーカーがネットの動画サイトで流した広告の台詞だ。メディア規制が厳しく、政府批判はもちろん、ヌードすらご法度のシンガポールでは、子作りを直接的に呼び掛ける内容はかなり「刺激的」だった。裏を返せば、少子化がそれほど深刻であるということを表しており、シンガポールの合計特殊出生率は僅か一・二〇に過ぎず、日本(一・三九)をも下回る数字だ。
矛盾するようだが、シンガポール国内の人口は着実に増加している。淡路島程度の面積の島国における人口は約五百三十万人で、十年前と比較すると百万人以上増加している。ただし純粋な「国民」は三百十万人程度で、残りは永住権か就労ビザを持つ外国人だ。
危機的ともいえる低出生率は、「移民先進国」とも称されるこの国が進めてきた外国人受け入れと無縁ではない。選別された外国人の大量流入に対して、国民の不満はピークに達している。政府は場当たり的な移民規制を発表しているものの、結果的に国民の不満をかわすことはできない。