サウジ王制「崩壊」は時間の問題
臨界に迫る「五つの内憂」
2012年9月号
「アラブの春」と名づけられた体制変革の炎は野火のように燃え広がり、現在はシリアで猛威を振るっている。しかしそのシリアさえ、当初は「革命の最も起こりそうにない国」とされていた。
それはエジプトも然りだ。今日、ムスリム同胞団出身の大統領が曲がりなりにも安定した身分で君臨する状況が出現したが、これを事前に予測できた専門家を筆者は知らない。
しかし、一方でリビアを含むこれらの独裁体制の弊害と社会不満はやがて爆発するであろう、という認識は、それこそ十年も前から囁かれていた。
この論理でいくと、豊かな石油・ガス収入が国家の安定と国民生活を支えているため騒擾は起こらないとされているサウジアラビアでも、混乱はいつ起きてもおかしくない、ということになる。
サウジアラビアは二十年も前から「時代遅れの王家はやがて国民の不満を抑えきれなくなる」と言われてきた。そのとき失業していた二十歳の若者は四十歳になったが、後述する一部の問題を除いて、その不満が表面化することはなかった。