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レバノン「点火」中東危機新局面に

周辺全域に「紛争拡散」の恐れ

2012年9月号

 シリア内戦化の余波が周辺国に拡散し、いよいよ中東全体を揺るがし始めた。歴史的にシリアの強い影響下にある隣国レバノンが、その「火薬庫」だ。親アサド政権派と反シリア派がせめぎ合うレバノン北部では既に衝突が続発。南部では、今やレバノンを政治的、軍事的に牛耳るイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラが自らの後ろ盾であるアサド政権の死守をかけ、シリアに戦闘員を送り込んでいるとさえ言われる。イランを筆頭とするシーア派がアサド政権を支え、サウジアラビア中心のスンニ派が反体制派を後押しするシリア内戦の構図は、いわばイランとサウジの「代理戦争」(外交筋)だ。中東全域を巻き込む泥沼の紛争に行き着く恐れさえ、はらんでいる。

ヒズボラの「極秘プラン」

 レバノン第二の都市・北部トリポリの住宅街を走る通称「シリア通り」。ここを境に、アサド大統領が属するイスラム教アラウィ派と、シリア反体制活動の中心勢力であるスンニ派が対峙して住んでいる。周囲の建物はどれも弾痕だらけだ。両者の確執は一九七〇年代のレバノン内戦時までさかのぼり、決して目新しくはないが、ここ数カ月、シリア情勢が飛・・・