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社会・文化

高齢化と人口減少の恐ろしさ

松谷明彦(政策研究大学院大学名誉教授)

2012年9月号

―少子高齢化に加え人口減少が始まり、危機的状況ではないですか。
 松谷
 従来の認識を改めて抜本的対策をとれば回避できるのだが、昨今の対応では、経済も社会も破綻するだろう。人口減少だけなら問題は少ない。人口規模が日本の三分の二であるドイツを見ればいい。問題は、日本の高齢化が他国に例を見ない異様な速度であることだ。日本では、現役世代がリタイア世代を支えるという欧米風のやり方は通用しないという認識がまず必要。

 ――少子化対策で対応できませんか。
 松谷
 それは認識不足の最たる例だ。出生率が向上すれば、日本の人口や人口構造が維持できるという考えはナンセンス。少子化対策で何とかなるのは普通の人口構造の国の場合。日本は戦後、飢餓への転落を恐れて、「産児制限」を行った。優生保護法で堕胎を事実上合法化した結果、異常なまでに子供の数が減り、当然この世代が産み出す「次世代」の数も減少した。日本の人口構造は、「団塊」と「団塊ジュニア」の二つの山があるのではなく、両世代の間に「谷」があるのだ。自国民の人口構造を恣意的に変えた先進国は日本だ・・・