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社会・文化

陳腐化ますますの「芥川賞」

「話題作り」を何より優先

2012年8月号

「今回の鹿島田真希の受賞は、順当と言えば順当。ただ、三十代の女性で直木賞との受賞者を揃えたのではと穿った見方もしたくなる」  全国紙のベテラン文芸記者はこう語る。あくまで個人的な好みであると断ったうえで、受賞作の『冥土めぐり』は読みやすい作品だが、文学的にそれほど価値があるか疑問だという。  七月十七日に発表された第百四十七回芥川賞は、ちょっとした節目の回だった。前回を最後に、長年、選考委員を務めてきた石原慎太郎が退任。同時に黒井千次も辞め、新たに奥泉光と堀江敏幸が加わったことで、初めて九人の選考委員全員が戦後生まれとなった。

文学界の「自滅行為」

 三顧の礼で迎えた選考委員に、「辞めてくれ」とは言いだせない。文芸評論家の大森望は、本人が辞めると言うまで延々と居座る、事実上の「終身制」について、かねて疑問を呈してきた。 「共に七十九歳の長老が揃って交代したのはよかった。特に石原氏の場合、新しいものを理解できないし、理解しようともしなかった」  過去には、「重鎮」と化した石原の反対で受賞できなかった作家もいた。しかしここ数年、石原の・・・