凋落止まらぬ「マルサ」
隠しきれない「能力劣化」と「士気低下」
2012年8月号
札束や金塊の隠し場所をあらゆる手段を使って突き止め、悪質な脱税犯を追い詰める――。
一九八〇年代に大ヒットした映画「マルサの女」で描かれた国税局査察部、通称マルサといえば、泣く子も黙る捜査機関である。強制調査権という強力な武器を手にする精鋭集団のはずであった。
七月上旬に国税庁が発表した、二〇一一年度の国税局査察部による強制調査(査察)の結果は衝撃的だった。昨年度の脱税総額は、七八年度以来実に三十三年ぶりに二百億円を下回ったのである。
この、マルサの凋落について、各メディアは「リーマン・ショック後の景気低迷を反映」「脱税規模が小さく、告発を見送ったケースも多かった」など、国税側の言い分をそのまま垂れ流していた。しかし「国税の報道統制は霞が関でもトップレベルの厳しさ」(全国紙社会部記者)だ。
「国税を取材対象とするマスコミからすれば本当の理由は書けなかったんだろう」
国税OBの一人はこう語った。