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経済

暴走続ける国際原油市場

需給とは無関係に乱高下

2012年8月号

 二〇一二年七月中旬、エネルギー関係者の間に大きな衝撃が走った。恐れていた中国のエネルギー需要の伸び率鈍化が鮮明になったからだ。中国の産業活動の状況を端的に示す電力需要量が一二年四月には前年同月比三・六%増と、一二年三月の同七・〇%増から大幅に低下した。リーマン・ショック後の世界経済のエンジンとなった中国の予想以上の景気低迷は、石油消費の中国特需の剝落を意味し、原油価格暴落の決定打となる。  案の定、一二年五月以降下げ足を強めていた原油価格はこれを受けて、北海ブレント原油ベースで一バレル百二十五ドルから一時は百ドル割れへと二十五ドルも暴落した。エネルギー専門家の一部には、「米国国内で活発化するシェールオイルの増産を食い止めるために、原油価格のさらなる下落を誘って中東産油国が原油増産を強行する」との見立てがあるのは、原油市場の先行き不透明感ゆえだ。  しかし、百ドル以上も暴落した戦後最悪といわれるリーマン・ショック時との大きな違いは、原油先物市場の構造が大きく変貌し、世界の石油需給の状況と原油価格に密接な相関関係がなくなっていることだ。原油市場はもはや、需給関係・・・