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深まる習近平の「孤立感」

懸念される国内統治力の弱体化

2012年8月号

 中国共産党大会まであと三カ月に迫った。だが、党内抗争はまだ決着がつかない。六月中に発表されなければならない薄熙来前重慶市党委員会書記の処分が七月半ばを過ぎても決まらない。それどころか、あちこちで薄熙来支持の保守派による不穏な動きが燻ってきた。  薄の誕生日の七月三日、重慶市内でバス停の路線図の上に誰かが「薄書記、誕生日おめでとう」という大きな文字を書いた。  商店のショーウインドーには「あなたは、どこにいるのですか。私たちは待っています。私たちを共同富裕の道に導いてください」という手書きのポスターが貼られていた。太子党の薄熙来に党権力を奪取させようとした保守派勢力の抵抗が続いているのだ。  続く七日は盧溝橋事件の記念日だった。北京市郊外の盧溝橋に尖閣諸島奪回を叫ぶ「中国民間保釣連合」(民間保釣)の活動家が集まって「日本に宣戦布告せよ」とデモを行った。民間保釣の背後勢力は、薄熙来支持勢力と重なる党、軍の保守派であり、反日運動に名を借りて、実は胡錦濤政権を揺さぶる保守派の運動体にほかならない。危険を感じた政権側は、デモの人数を十四人までに制限し、警察力を動員して抑え込ん・・・