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印「ガンジー家支配」に高まる不満

経済悪化に苦しむ民衆の冷めた視線

2012年8月号

「私を支援してくれた皆に感謝する」  大統領選挙で当選が決まった七月二十二日、プラナブ・ムカジー新大統領はこう述べた。インドの大統領は儀礼的な名誉職に近く、財務相から大統領への「栄転」は異例中の異例だ。首相候補にもなっていた人物とあれば尚更である。大統領選はガンジー家による体のいい「ムカジー更迭」にほかならない。なぜ今、このタイミングで実力者であるムカジーが閑職に追いやられたのか。影の首相とも呼ばれる国民会議派総裁ソニア・ガンジーのシナリオを読み解くカギは、「待ったなしの経済」と「息子ラフル」にある。

「マザコン坊や」の入閣を画策

「四十年にわたる政治家人生を終えることに、一抹の感傷もある……、寂しくなります」  ムカジーが財務省での最後の記者会見で、“原稿に目を通しながら”こう述べた。その翌日、同じ財務省に現れた財務相兼任となったマンモハン・シン首相は、「悲観論を吹き飛ばし、インド経済にアニマルスピリットを取り戻せ」と同省高官たちの前で、珍しく語気を強めてみせた。 「私は為替レートを心配している。今や投資家心理は冷え込み、資本・・・