北極圏で資源めぐる「陣取り合戦」
沿海諸国の「軍拡」過熱
2012年8月号
巨大な天然資源の開発競争が始まっている北極圏で、各国の軍備拡張が進んでいる。資源探査や深海掘削など、着々と進む経済活動に、各国は支援態勢の整備を急いでおり、向こう数年間でさらに増強を行う方針だ。各国の陣取り合戦が続く中での軍拡に、「想定外の事態」への懸念もある。
今年三月、ノルウェーの北極圏で北大西洋条約機構(NATO)が軍事演習「コールド・レスポンス二〇一二」を行った。北極圏での演習は、二〇〇六年にノルウェーで最初に行われて以来、今回が五回目だが、参加兵員は一万六千人と過去最大で、NATO未加盟国のスウェーデン、フィンランドも加わった。ノルウェー軍によると、戦闘演習だけでなく、厳寒の中での経済施設へのテロ攻撃、大規模船団を使った抗議行動など、現時点で想定しうる様々な「安全保障上の脅威」に対処した。
「どんな演習をしたかの情報が全く出てこない。かなり具体的、実戦的だったのではないか」とカナダ人記者は言う。
演習はNATO軍の限界もさらけ出した。ノルウェー空軍のC一三〇輸送機が、スウェーデンのケブネカイセ山(標高約二千百メートル)の西壁に衝突して、乗員五人全員が死・・・