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WORLD

《世界のキーパーソン》サー・マービン・キング(イングランド銀行総裁)

「醜聞まみれ」英金融界の掃除役

2012年8月号

 世界の金融業界がまた揺れている。今度は、少数の銀行がロンドン銀行間取引金利(LIBOR)を不正操作していた疑惑だ。その欧州版(EURIBOR)も不正の疑いがもたれ、日本版(TIBOR)も調査されている。約三百六十億円の課徴金を命じられた英銀行バークレイズはもとより、ドイツ銀行など複数の大手行が損害賠償訴訟の標的になる。「金融紳士」の看板を自ら壊す、欲得まみれの醜聞である。

 中心にいるのが、紳士の中の紳士であるはずのイングランド銀行(英中央銀行)。シティーの悪習を、キング総裁ら最高幹部が見逃していたのか否かが問われている。バーナンキ米連邦準備制度理事会議長は「LIBORには構造的欠陥があった」と認め、ガイトナー米財務長官もニューヨーク連銀総裁時代の二〇〇八年に、キングに警告した事実を公表した。来年で就任十周年を迎えるキングと、その後継候補だったポール・タッカー副総裁は、「汚物溜め」(副総裁の表現)の中に身を置いている。

 醜聞拡大前のキングは、名声を享受していた。〇八年のリーマン・ショック、その後のユーロ危機の嵐の中、英金融業界はおおむね繁・・・