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社会・文化

お粗末過ぎる「外事警察」

無能な「冷戦時代の遺物」

2012年7月号

「外事警察」が注目を浴びている。  きっかけは、NHKで放送されたドラマとその原案小説『外事警察』(麻生幾著)だった。放送は二〇〇九年、昨年末には続編小説が出て、この六月に映画が公開されている。 「先日映画を見てきたが、フィクションとはいえ余りに現実とかけ離れている」  警視庁の公安関係者は、こう呆れた。「公安が生んだ魔物」なる超人的主人公が大金を動かし工作活動を駆使してテロリストを追い詰める姿について、「実際はもっと地味なもの」と自嘲気味に語った。

「一等書記官」はスパイか

 五月、在日中国大使館の元一等書記官、李春光のスパイ疑惑が読売新聞により「スクープ」された。五月中旬に警視庁公安部が外務省を通じて出頭要請していた書記官が、二十三日に帰国していたことは周知の通りだ。その後、元書記官が、前農林水産大臣の鹿野道彦氏などに接触していたという報道が続き、結果として六月の内閣改造で鹿野氏は「放逐」されている。映画の公開に合わせるかのような、外事警察の「お手柄」だった。 「元書記官は、スパイどころか、肩書は持っていたがちゃんとした外交官・・・