三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

中印の「ネパール争奪戦」が激化

軍拡競争が過熱の「ヒマラヤ戦線」

2012年7月号

「真珠の首飾り」と称される中国のインド洋進出と、これに対抗し、この地域への勢力維持を図ろうとするインドの確執が取りざたされている。両国のつばぜり合いは、アフリカのマダガスカルやセーシェル諸島にまで及んでいるが、もう一つ、「陸の戦線」として、ネパールが浮上している。  ネパールは、エベレストの麓に位置するアジアでも最悪レベルの貧困国だが、中国のチベット自治区とインド北東部に挟まれた戦略的な要衝だ。台湾と(最近では南シナ海も)並び、チベットを「核心的利益」と呼んできた中国共産党にとって、その先のネパールの安定は、チベットの安定統治に欠かせない。

国境に三十万人の人民解放軍

 チベットと同様、レアアースを含む鉱物資源が豊富といわれるネパールは水資源も豊かだ。水力発電の能力はインド政府の推計では四万三千メガワットだが、地下資源と共にほとんど未開発のままだ。二〇〇八年の君主制廃止以来、各政党間の確執による政治混乱が深刻で、憲法すら制定できない状態が続いているからだが、「歴史的、文化的にインドの影響下にあったネパールだが、この混乱に乗じて中国がじわじわ・・・