行き詰まったブラジル経済
いまや「新興国」の面影もなし
2012年7月号
「ブラジルは所得分配の不平等をなくし、『繁栄の時代』に入った」
ジルマ・ルセフ大統領は年初のラジオ番組「大統領と朝食を」で国民に向かってこう述べた。大統領就任から一年半、彼女はこうしたテレビ、ラジオ、新聞などのメディアを最大限に利用してきた。政権支持率は右肩上がりを続け、最新の調査では六割を超えている。一方で、昨年の経済成長率は二・七%、今年はゼロに近づく。もはや「新興国」とは呼べない数字だ。
「低迷する経済」に対して「支持率の上昇」という矛盾は、金融機関や官僚、外国企業を攻撃して国民の不満をかわす彼女一流のポピュリズムによるもの。かつて極左ゲリラとして名を馳せ、拷問を経験しているルセフには朝飯前だ。だが、「正義への熱狂」が冷めるまでそう時間はかからないだろう。経済成長モデルは限界に達し、雇用が天井を打った今、支持率とともに「繁栄の時代」は「終わり」を迎えようとしている。