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連載

Book Reviewing Globe 338

「最悪のケース」への対処法とは

2012年7月号

Worst Cases: Terror and Catastrophe in the Popular Imagination Lee Clarke  University of Chicago Press 2006

 福島第一原発事故の原因と背景を独立の立場から検証した「民間事故調」(福島原発事故独立検証委員会)の功績の一つは、事故対応のさなか、菅直人政権が「最悪のシナリオ」を作成したいきさつを初めて詳細に明らかにしたことだっただろう。

 報告書は、4号機の燃料プールが実は事故を「悪魔のシナリオ」に向かわせかねないもっとも弱い環としてとらえた。

 核廃棄物のバックエンドをどのように保管し、処理するのか。そうしたバックエンドのリスクが、原子力発電所というフロントエンドのリスクよりある意味ではさらなるリスクであることをこの事故は示した。

「最悪のシナリオ」の効用とは、蓋然性ではなく可能性のリスクの想像力テストであり、死角に気付くためのサイドミラーであり、バグを見つけるためのデバッグ、としての効・・・