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ムスリム同胞団という「難物」

中東に乱を招く「過激主義組織」

2012年7月号

 エジプトは、遂にイスラム政党の手に落ちたのか。一九二八年の結成以来、苦節八十余年を経て、ムスリム同胞団はとうとうこの大国の「頂上」に上り詰めた。  しかし、軍評議会は決選投票前夜に「補足憲法宣言」なる命令を出して、「これから選ばれる大統領には、軍に命令する権限などありもしない」と専断していた。イスラム系が議席の三分の二を占める人民議会を解散させるべく最高憲法裁判所の判断という奥の手も繰り出した。そんな前代未聞の離れ業を堂々とやってのける軍がこの国の絶対唯一の支配者であることは、「エジプト革命」が一応の終息を見た昨年一月末の時点から、既に誰の目にも明らかであった。タハリール広場を我が物顔で暴れ回っていた「革命青年」たちが、鎮圧に出動してきた米国製最新鋭戦車の姿を見て怖気づき、「歓迎! 軍は革命の味方」と叫んだその瞬間からである。  それでも、革命の精神を真摯に受け止めざるを得なかった軍部は、腐敗の限りを尽くしていた「最後のファラオ」、ムバラク前大統領一家を失脚させた。この時、軍部は自らの既得権益さえ守ることができればとの条件で、漸進的な民主化に取り組む用意と覚悟はあったと・・・