三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

イスラエル「サイバー戦争」の熾烈

仮想空間では各国と「交戦中」

2012年7月号

 イランの核開発の妨害を狙ったとみられるコンピューターウイルスが五月末、新たに発覚した。その名は「フレー(Flame)」。かつてない高度で悪質なウイルスとされ、ネットワークを介して情報を盗み取るだけでなく、無線通信を作動させて近くの携帯電話などに潜入を図る、まさにスパイだ。専門家は「このウイルス開発には明白な使用目的がある」と国家の関与を指摘し、イスラエルが疑われている。これだけなら相変わらずの「陰謀論」と思う向きもあろうが、イスラエルはサイバー戦略を国防上の最重要分野に位置づけると同時に、国の「中核産業」として研究開発に乗り出しており、そう単純には切り捨てられない側面が多々ある。いわばイスラエルは、実際の軍事攻撃をちらつかせながら、仮想空間では既にイランと開戦状態にあるのだ。

核兵器と同じ「あいまい政策」

「サイバー面に国の大小は関係ない。重要なのは科学水準だ。私はこの国を世界で五指に入る『サイバー先進国』にしてみせる」。イスラエルのネタニヤフ首相が五月二十九日、テルアビブでの講演で熱弁を振るった。ヤアロン戦略担当相も「イスラエルの高度な技術は・・・