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スペイン政財界を牛耳る「宗教組織」

経済危機招いた「エリート信者」たち

2012年7月号

 スペインの債務危機が重大局面に入った。ラホイ政権は六月、欧州連合(EU)に銀行救済を要請し、苦境が鮮明になった。ユーロ圏第四の大国は最悪の不動産バブルを抱えており、その影響はギリシャを遥かに上回る。背景には、「オプス・デイ」(ラテン語で「神の業」)というカトリック教会の組織のメンバーが多数かかわっており、スペインの闇を浮かび上がらせている。

見えない所で途方もない影響力

 銀行危機で揺れる六月中旬、スペインのカトリック教会から国民党政権に厳しい注文がついた。司教会議が三十ページ、二十一項目の「提案」を出し、二〇一一年までの八年間で社会労働党政権が導入した、「反教会的」制度の撤回を求めた。前政権は、離婚手続きを簡素化し、同性愛結婚も認め、西欧で最も保守的だったスペイン社会に、風穴をあけた。教会を率いるアントニオ・ロウコ枢機卿は事前に地元紙に対し、「政府には時間を与える」と述べた。枢機卿は過去二度の総選挙で、国民党を全面支援しており、「借りを返せ」とばかりに、同郷(ガリシア)のラホイ首相に宿題を出した。  スペイン政府は肝心の経済でも、別のカ・・・