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社会・文化

「漢方薬時代」に取り残される日本

医療費増大の隠れた「元凶」

2012年6月号

 国家財政を圧迫する高齢者医療の無駄については、すでに弊誌前号が指摘しているところだが、その医療費増大の隠れたもう一つの「元凶」ともいえるのが、処方薬の高額化という問題だ。開発に膨大な資金が投じられる新薬は年々高額化し、医療財政を圧迫しているのは周知のとおりだ。  こうした中、これに歯止めをかける「切り札」として昨今、期待が集まるのが「漢方薬」だ。後述するように、ここにきて世界的に漢方薬の効能について再評価が起こっており、欧米諸国を中心に、新たな研究開発が活発化している。  しかし、こうした諸外国の動きに大きく後れを取っているのが、日本の医療現場だ。

薬剤費削減効果は一兆円超

 三月二十二日、参議院の内閣委員会。はたともこ参院議員(薬剤師)が新型インフルエンザ治療に対する漢方薬「麻黄湯」の効能についての見解を質すと、厚生労働省の大臣官房審議官はこう答えた。 「インフルエンザの悪寒、発熱等の諸症状に対し効能を有する」  漢方薬の治療効果が国会の場で初めて認められた瞬間だった。はた議員は質問の狙いをこう話す。 「麻黄湯はイン・・・