不運の名選手たち30
長畑弘伸(競泳選手) 人生を変えた「フライング」
2012年6月号
前代未聞のジャッジだった。
一九九二年四月に行われたバルセロナ五輪・競泳代表選考会。男子百メートル平泳ぎ決勝でのこと。
「用意!」のかけ声の後、号砲が続けざまに二度鳴った。通常、ピストル音は一度だ。つまり、それはフライングを意味していた。
そのとき、すでに水中に飛び込んでいた選手は三人。そのうちの一人、長畑弘伸は振り返る。
「自分の中では、ジャスト(のタイミング)だと思った」
現在の規定ではフライングは即失格だが、当時は故意でなければ一度まで許された。プールから上がった長畑は、再びスタート台に上がろうとした。そのときだった。
「審判員がやってきて『失格!』って言われた。そうしたら横の選手も失格って言われてて……」
結局、フライングを犯した三人全員が失格になった。三人とも故意だと見なされたのだ。
わざとかどうか―。その見極めは極めて難しい。
確かに、その頃は心理作戦として意図・・・
一九九二年四月に行われたバルセロナ五輪・競泳代表選考会。男子百メートル平泳ぎ決勝でのこと。
「用意!」のかけ声の後、号砲が続けざまに二度鳴った。通常、ピストル音は一度だ。つまり、それはフライングを意味していた。
そのとき、すでに水中に飛び込んでいた選手は三人。そのうちの一人、長畑弘伸は振り返る。
「自分の中では、ジャスト(のタイミング)だと思った」
現在の規定ではフライングは即失格だが、当時は故意でなければ一度まで許された。プールから上がった長畑は、再びスタート台に上がろうとした。そのときだった。
「審判員がやってきて『失格!』って言われた。そうしたら横の選手も失格って言われてて……」
結局、フライングを犯した三人全員が失格になった。三人とも故意だと見なされたのだ。
わざとかどうか―。その見極めは極めて難しい。
確かに、その頃は心理作戦として意図・・・