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連載

西風 373

満員御礼「橋下劇場」
八木亜夫

2012年6月号

 五月八日午前九時過ぎ、橋下徹大阪市長は明らかにキレていた。毎朝のように行われる報道陣による囲み取材で、毎日放送(MBS)の女性記者が、国歌の起立斉唱命令と「口元チェック」について質問したのに対して激高した。
「答えなさい! 答えられないんだったらここへ来るな! 勉強してから来い!」
「何を言ってる! もう、ほんとふざけた取材すんなよ」

?公の場では冷静に?という大人の常識を持ち出すまでもなく、市長が記者を恫喝し、逆質問し、命令口調でなじることなど、本来ならあり得ないはずだ。にもかかわらず、橋下氏は「この場は議会じゃないので、僕は答弁の義務だけ負ってるわけじゃない」と記者の質問を遮り、「MBSは社歌ないの? だからこんな頓珍漢な記者になっちゃうんだ」とテレビカメラの前で面罵した。

 高校の卒業式で教員の口元の動きをチェックさせていた校長を問題視し、やや一方的に質問した女性記者が気に障ったのは確かだろう。しかし、見逃してはならないのは、計算ずくでキレている橋下氏のしたたかさだ。

 意図的に対立構図を演出・・・