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習近平体制に深刻な亀裂

脆弱な権力基盤が浮き彫りに

2012年6月号

 中国共産党を揺るがす薄煕来事件の影響は、次第に権力の暗部へ波及し始めた。外からもわかる共青団派と太子党派の抗争とからみながら、さらに深層で亀裂が走っている。中国の軍産複合体を支配する曽慶紅(前国家副主席)と、次の党軍トップとなる習近平国家副主席の関係悪化だ。  曽慶紅は江沢民政権の軍師として政界の舞台裏で活躍してきた。表の場に出ることはほとんどなく、中国でも実像はあまり知られていない。二〇〇七年の第十七回党大会で引退してからは、メディアに名前が出ることもまれになった。しかし、曽慶紅が老衰の激しい江沢民をかついで、党人事に隠然たる権力をふるっている実態は変わらない。  五月、その曽慶紅が動いた。薄煕来事件の報道は目に見えて減っている。それに代わって、薄煕来が去った後の重慶市をめぐる動きが新しい「台風の目」になってきた。

軍産複合体が死守する重慶

 習近平が山東省の姜異康党委員会書記(党中央委員)へ直々に連絡をとり、重慶市党委書記に異動させると通告してきたという。姜書記は軍出身だが党中央弁公庁の勤務が長く曽慶紅の側近として知られている。・・・