南米に「資源ナショナリズム」が再燃
市場は大衆迎合政治の人質に
2012年6月号
イラン情勢の緊迫化などで、原油価格をはじめとした資源エネルギー価格の動向が不透明感を増していた四月中旬、国際資源市場に大きな衝撃が走った。アルゼンチンがスペイン系石油企業YPFの国有化を唐突に発表したからだ。背景には、豊富な国内資源の囲い込みによるエネルギー貿易収支の改善と国家財政の立て直しがあったのは言うまでもない。
もっともアルゼンチンには、二〇〇八年に欧州諸国の金融機関が参入していた年金基金のほか、スペイン企業傘下のアルゼンチン航空を国有化してスペイン政府を激怒させた過去があるが、エネルギー資源の国有化はまさに欧米エネルギー企業の間で燻り続けてきた不安ではあった。
今や事態はアルゼンチンにとどまらず、周辺諸国への波及が懸念される段階に入ろうとしている。石油、天然ガスといった豊富な鉱物資源を有するベネズエラやエクアドルでは欧米資本の排斥に向けた動きが強まるなど、資源の国有化という連鎖が生む「資源ナショナリズム」の台頭がここにきていよいよ現実のものとなり始めている。