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WORLD

「監視国家」へ突き進む英国

電話もネットも政府に「筒抜け」

2012年6月号

 英国はいま、不気味な監視国家への道を辿ろうとしている。  政府は、今後一年以内に、国民一人ひとりの通話、電子メール、ウェブサイトの利用に対して、政府が傍受する範囲を大きく拡大させる法案の成立を目指している。  五月九日、新規国会の会期開始の恒例として、エリザベス女王は審議予定の法案の一覧を演説に織り込んだ。この中に入ったのが通信データ法案だ。国内のインターネット・プロバイダーに対し、専用の通信機を新たに組み込むよう要請するという内容が盛り込まれている。これにより、諜報機関の政府通信本部(GCHQ)が、電話での通話、電子メール、ウェブサイトの閲覧状況をリアルタイムに傍受することが可能になる。 「通信の中身は情報収集しない」(GCHQ)そうだが、内務大臣の認可が必要になるとはいえ、GCHQは「誰が、いつ、どこで、誰と」情報交換を行ったかの情報を瞬時に入手できるのだ。個人の通信利用状況を一括して掌握されることで、国民は詳細かつ莫大な量の情報を政府にゆだねることになる。プライバシー保護のために活動する団体「オープン・ライツ・グループ」は、「『報道の自由、言論の自由』を標榜す・・・