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社会・文化

検察審査会「強制起訴制度」の限界

「小沢裁判」は何だったのか

2012年5月号

「市民感覚」で強制起訴された小沢一郎・民主党元代表に無罪判決が出た。「けしからん」による被告人づくりの限界を見せ付ける格好となった。一方、自らの手で小沢氏を訴追できなかった検察が意趣返しで「市民」をけしかける裁判でもあったが、ここでも検察は完全敗北を喫するはめとなった。検察審査会の強制起訴制度、裁判員裁判制度が刑事司法に導入され、裁判所が感情司法になびこうとしているなか、小沢判決は「疑わしきは罰せず」の原則をかろうじて保持する結果となった。

証拠など二の次

 土地購入資金を政治資金収支報告書に虚偽記載したとして強制起訴された小沢裁判。本稿は小沢氏の肩を持つ立場ではない。無罪とはいえ判決は黒に近い灰色とも評定した。しかし、公判途上、裁判所は元秘書らとの共謀関係を示す検察官調書をことごとく証拠から排除した。この時点で無罪は確定していた。裁判所は検事調書に自白の強要、威迫誘導があったとし、また虚偽調書の存在まで指摘していた。  こうした東京地検特捜部の杜撰な捜査、証拠の上に乗って東京第五検察審査会は小沢氏を「起訴相当」と二度議決し、法廷に送り込ん・・・