《企業研究 》東武鉄道
安全・安心を軽視する吝嗇経営
2012年5月号
五月二十二日にいよいよ開業の時を迎える東京スカイツリー。その華やかさの陰に隠れるかのようにこの秋、隣接する足立区内で三十年超にわたり懸案となってきた、ある「大型プロジェクト」がようやく動き出す。東武伊勢崎線(スカイツリーライン)竹ノ塚駅周辺高架化事業―。駅南側に横たわる大踏切を撤去して約一・七キロメートルにわたる連続立体交差線に衣替えしようというもので、この三月末、事業主体となる足立区と東武鉄道の間で施行協定がまとまり、正式に着工が決まった。
足立区がこのプロジェクトに投じる資金は国や東京都の補助金を含め、二〇一二年度における区の当初予算の二割近くに相当する四百五十六億円にものぼる。一方、東武の負担は八十八億円。タワー本体だけで六百五十億円、周辺のオフィス・商業施設などを合わせると総事業費一千四百三十億円が投じられたスカイツリー開発のわずか一割にも満たない。それでも区が事業化に踏み切るのは「鉄道によって分断されている市街地を一体化して街の活性化につなげる」(関係者)といった理由もさることながら、ひたすら住民らの安全・安心の確保のためだ。この大型プロジェク・・・