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経済

トヨタの窮状映す「車台共通化」

連続赤字の末の「苦肉の策」

2012年5月号

 トヨタ自動車は四月九日、全生産台数の半分に当たる新型車のプラットホーム(車台)を三種類に集約するなどの生産合理化策を発表した。この発表を一部の業界関係者は訝しげに見つめていた。それもそのはず、かつて「車台共通化」に手を出したのは、ほとんどがライバルに追い詰められたメーカーであり、しかも、成功事例は少ない。業界では、いわば「禁じ手」とされているものだ。なぜトヨタはそんな「危ない橋」を、あえて渡ろうとするのか。  その背景にあるのは、トヨタを取り巻く環境悪化にコスト削減以外の手が打てない経営陣の無力にほかならない。車台共通化は、トヨタの置かれている窮状を明確に映す「サイン」なのだ。

下請けへの「しわ寄せ」も限界

 このほどトヨタが採用を明らかにした新たな開発手法「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー(TNGA)」。同社では、これにより車台共通化を実現し、二〇一三年三月末には〇九年度比で開発効率を約三〇%引き上げ、商品開発力の強化と開発コストの削減を両立するという。  この車台共通化の概念自体は決して新しいものではない。近年では、・・・