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経済

台湾「鴻海」が描く生き残り戦略

日本メーカーは食い散らかされる

2012年5月号

 エレクトロニクス産業の・黒衣・が装束を脱ぎ捨て、役者の並ぶ表舞台に上がった―。世界最大のEMS(電機製品の受託生産メーカー)である台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)がシャープと結んだ資本業務提携を評すればこうなるだろう。  鴻海精密は売上高が十兆円にも届こうかという巨大メーカーだが、アップルのiPhone、iPadなどの組み立てを中心に、任天堂、ソニー、HP、ノキア、モトローラなど世界的なメーカーから組み立てを請け負うことに集中し、自らが表面に出るのを避けてきた。その意味で、シャープとの提携はこれまでにない新たな行動といえる。  鴻海精密は世界最先端の第十世代の液晶パネル工場であるシャープ堺工場の運営会社の株式の過半を買収、シャープ本体にも一〇%を出資し、筆頭株主となった。トップの郭台銘(テリー・ゴウ)氏の個人出資分も含めれば総額一千三百億円の投資となる。巨額であることは間違いないが、シャープが四千三百億円を投じて社運を懸けた工場と、液晶パネルに関しては世界で最も充実した技術陣を実質支配できるとなれば、むしろ安い買い物だろう。鴻海精密は奇美電子という世界トップ5に入る液晶パネ・・・