欧州不況は長期化する
主要国の「産業破壊」が深刻
2012年5月号
ヨーロッパ経済が新たな不況に向かっている。放漫財政から一転して歳出削減を進めたが、需要が冷え込み、欧州の中核的産業が打撃を受けている。ユーロ圏で二~四位の大国フランス、イタリア、スペインでは産業破壊が深刻で、不況の長期化が確実だ。仏に社会党の新政権が登場すると、新たな債務危機併発の可能性もある。
ユーロ圏第二の大国フランスが「次の震源地」になりそうだ。国家主導がこの国の停滞を招いたことは本誌三月号で紹介したが、五月六日の大統領選決選投票では、社会党フランソワ・オランド候補の政権奪取が確実の情勢で、ユーロ圏はさらに混迷する見通しだ。
「大統領選で票を伸ばした社会党、国民戦線、『左派戦線』はいずれも、ユーロ圏の緊縮経済路線に反対する。反緊縮勢力は、六月の国民議会(下院)選挙で議席を伸ばす見込みで、フランスは行政府も立法府も、『ユーロ懐疑派』になる可能性がある」と在仏邦人記者は言う。
仏経済は今年第1四半期まで二連続四半期ゼロ成長。しかも、統計以上に産業界は重症だ。経済紙「レゼコー」が民間調査機関に委託した調査によると、二〇〇九~一一年の三年間で、フランスでは九百の工・・・