「末期症状」露呈した北朝鮮
ミサイル失敗は「体制崩壊」の前触れか
2012年5月号
幻覚剤のLSDを服用して陶酔した人間に生じる幻覚としか表現のしようもない。朝鮮労働党第一書記、国防委員会第一委員長に就任した北朝鮮の最高指導者が、祖父の金日成生誕百周年という建国以来の大軍事パレードを挙行する二日前の「号砲」に異変が起きた。北の住民一千九百万人の一年分の食糧である、トウモロコシ二百五十万トンが購入可能な八億五千万ドル(四月十四日付東亜日報)を費やした長距離ロケットが、発射された直後に爆発して飛散し、黄海の藻屑となってしまった。巨額な経費だけではない。内外に対して失った威信の大きさがどれほどかはこれからこの国に発生するできごとを観察すればいい。
外国の報道陣七十人余を招くという異例の設営をしたからには一〇〇%に近い成功の自信があったのだろう。にもかかわらず「悲劇」が起きたのは単に技術水準が低いから、と笑って済ませていいのだろうか。今後少なからぬ数の関係者が処刑を含む処罰を受けるだろうが、技術的なサボタージュや工作はなかったと言い切れるか。前例に従って威信回復を図る、戦略、戦術上の計算に基づいた核実験、それも濃縮ウランを使用したテストはいつ実施されるのか。すでに始・・・