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日本人の余暇は進んだか

柳田尚也(財団法人日本生産性本部 余暇創研 主任研究員)

2012年5月号

 ―今年も大型連休に突入しましたが、昨今日本人の余暇の過ごし方は豊かになっているのでしょうか。

 柳田 そもそも日本には「余暇」という概念そのものがなく、言葉自体も戦後に定着した新しいものだ。しかし、実態として日本に全く存在しなかったというわけではない。江戸時代をみると、働きづめの町人でも、神社の祭りや宗教心からの参詣という口実で休暇は比較的自由にとっている。農民も若者たちが村の上層部を突き上げて、「遊び日」という独自の休暇を獲得してきた「労使交渉」の実態も明らかになっている。むしろ、余暇を楽しむ力を失っていったのは戦前までの近代以降で、その意味では日本は江戸の余暇文化から後退しているといえよう。

 ―日本の余暇の遅れは休暇制度や祝日制度など制度面の問題でしょうか。

 柳田 実は制度面では日本はむしろ進んでいる。余暇の枠組みは週休日、年次有給休暇、法定休日(祝日)で捉えるが、週休日は世界共通として、法定休日は十五日と主要先進国中最多で、年次有給休暇も平均十七・九日と・・・