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社会・文化

北海道「春の妖精」の魅力

足元に咲き乱れる花々

2012年4月号

 春に咲くといえば桜。入学式の校門をあでやかに彩り、川の土手に連なり、旧家の庭に古木が初々しい花をつける。最もポピュラーなソメイヨシノ(染井吉野)は葉が出る前に満開になるので、花いろがひときわ映える。  南北に長い日本列島。沖縄では一月からヒカンザクラ(緋寒桜)の花見ができるし、最も遅い北海道・根室のチシマザクラ(千島桜)は五月も末にようやく咲く。新年度が桜と共に始まると思うのは、実はかなり中央集権的な季節感かもしれない。

「マンサク」生存戦略の妙

 北国・北海道の春は枝先ではなく、足元からやってくる。四月半ば、ようやく重い雪が溶けて、黒ぐろとした土が顔を出すと、いち早く咲き始める春の花々がある。  フクジュソウ、カタクリ、エゾエンゴサク、ニリンソウ……。小さな体に不似合いなほどの大ぶりの花をつけ、明るい林の地面を、所によっては隙間ないほどにびっしりと埋め尽くして咲き乱れる。  本州でマンサクと言えば、細く縮れたような黄色い花をつける低木だが、この木が分布しない北海道では、フクジュソウ(福寿草)がこの名前で呼ばれる。日当たりのい・・・