財政危機から抜け出せぬインド
「大衆迎合競争」で身動きとれず
2012年4月号
「がっかりしている、もっと現実的な批判をしてほしい」
プラナブ・ムカジー財務相(七十七歳)は、二〇一二年度(一二年四月~一三年三月)予算発表翌日の三月十七日、記者会見でこう述べた。インド経済の裏も表も知り尽くした国民会議派重鎮である同相は、三十年前に初めてこの場に立って以来、今回が七回目の登場となる。だが今回ばかりは様子が違う。メディアの反応が厳しいことに対して、疲れと苛立ちを見せながら言い訳を始めたのだ。
「(今回の予算案で)確かに物品税を一〇%から一二%に上げたが、〇八年には景気対策として一四%から一〇%に引き下げている。今回、引き上げたが一四%までは上げてはいない」
言い訳の多くは「物品税引き上げ」に対するものだ。しかし、税率引き上げは良識ある国民には受け容れられるものだ。問題は「抑制の効かない歳出」にある。インフラ整備などに充てられる資本支出はGDP比でわずか二%である一方で、経常支出は同一三%近い。まさにバラマキだ。この支出構造によってインドの財政赤字は増大している。一一年度の財政赤字は削減目標のGDP比四・六%に対して、五・九%と大幅な下振れで終わる見通し・・・