三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

政治

「被災地エゴ」を制御できぬ政治

変革に抗う「民意」の言いなり

2012年4月号

 結局、日本は何も変わらなかったのではないか。そんな疑念が世界中に広がっている。東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故は、少子高齢化と人口減でコミュニティが機能不全になる近未来像を一気に顕在化させ、国民意識にも変化が生まれたのに、政治は変革に抗おうとする国民感情の方に迎合し、無益に一年を過ごしたからだ。日本の生き残りに必要な改革に着手する千載一遇の機会を逃したと言ってもいい。

心を鬼にしない政治家

 例えば、大津波で被災した低地の集落の高台移転の現状だ。多くの集落で住民が移転計画に合意できないばかりか、移転派と反移転派に分裂する事例が相次ぎ、三月末までに国の認可を受けた移転計画は、宮城県岩沼市と石巻市の数集落分に過ぎない。  宮城県では当初、移転対象地区数を五十九と試算したが、今や三倍の約百八十地区に膨れ上がっている。被災者数や被災地域が増えたからではない。一地区として数えていた場所が、住民対立の結果、「移転賛成世帯」と「移転反対世帯」の間で更に線引きしなくてはならず、二地区、三地区と細分化されたからだ。個々の移転計画が必要になる・・・