ロンドンを覆う「犯罪と貧困 危惧される五輪期間中の治安 2012年4月号 来る七月、六十四年ぶりにオリンピックが開催されるロンドンだが、街の表情は今一つ冴えない。世界最大のスポーツイベントが行われる地域は、低所得者層の吹き溜まりと化したエリアと重なる。ギャング団を形成した若年層による、一般市民を巻き込んだ犯罪が頻発し、華やかな国際行事を目前にしたロンドンに、暗い影を落としている。 メーン会場周辺は貧困世帯が密集 三月上旬、ガーナ出身のクワメ・オフソアサレ君(十七歳)は、ロンドン南部ブリクストンにある、低所得者層が住む公団住宅の一角で、複数の男性に刃物で刺され、病院に運ばれる途中、死亡した。七歳で家族とともに英国に移住し、サッカー選手になることを夢見た青年だった。ロンドン警視庁は、地元ギャング団による犯行と見て捜査中だ。「息子はギャングには一切関係していなかった。それでも殺された」「誰もがギャング犯罪の犠牲者になるリスクがあることを分かってほしい」。父親は訴えかけるように、報道陣に語った。 ロンドンでは、青少年によるナイフ犯罪が多発している。ブリクストン近辺の南部だけでも、事件発生の数日前となる二月二十五日には・・・