日本は「緩やかな衰退」では済まない
菅野雅明(JPモルガン証券 チーフエコノミスト)
2012年3月号
―経常赤字が現実となり、日本は緩やかに衰退していくのでしょうか。
菅野 衰退するとすれば緩やかではなく、大きなショックを伴う可能性が高い。財政赤字を放置したまま経常赤字に転落すれば、国債の消化を海外に依存することになり、低利での国債発行は困難になろう。少子高齢化を辿る中で今後数十年かけた緩やかな衰退というイメージは描きづらい。足下での増税という「痛み」を受容できなければ、いずれ市場が警告を発することになるからだ。消費税は一〇%でなく、二〇%程度に上げるべき状態だ。この点につき国民的コンセンサスを作る必要がある。昨年の貿易赤字化をその議論の契機にすべきだ。―危機はいつごろ訪れますか。
菅野 赤字に転落してすぐにショックが訪れるわけではない。ショックは財政に対する市場の信認が失われた時だ。二〇〇七年以前は、輸入価格が輸出価格を年率で上回っていた分を、輸出量の増加分でカバーできていた。しかし・・・