本に遇う 連載147
責任感覚なき指導者
河谷史夫
2012年3月号
NHKの朝の連続ドラマ「カーネーション」の評判がいい。
「おはなはん」以来、連ドラの主流は「女の一生」だ。極貧の生まれから一代でスーパーマーケットの経営者になった「おしん」を頂点に、女主人公の生き方が共感を呼ぶとき、視聴率が上がる。女手ひとつ洋裁店を切り盛りし、ファッションデザイナー三姉妹を育て上げた母親がモデルのドラマが受けているのは、父親がだらしないことの反動かも知れない。
私見だが朝の連ドラは国民教育の働きをする。女主人公はたいてい関東大震災、昭和の戦争のどちらとも、あるいはどちらかをくぐって生き抜く。震災のほうは、阪神淡路に続いて去年とんでもないのに見舞われたから誰もが認識を新たにしたが、敗戦後六十六年、戦争の記憶はもう霞みのはるか彼方に消えかかっている。
そんな時にドラマに挟み込まれた「戦争」が注意喚起の作用をするのだ。意図してのことかどうかは知らない。だがこの前の「おひさ・・・