目を覆う新聞経済記事の堕落
真実を書きづらい時代になった
2012年3月号
金融関係者は驚き、呆れ果てた。二月二日の朝日新聞の記事である。一面トップに
「日本国債の急落を想定 三菱UFJ銀 危機対策」
というオドロオドロシイ見出しが躍っていた。後述するように、精読すれば金融関係者ならずとも、金融知識を多少なりとも有している経済学部の学生であれば、この「スクープ記事」がいかに針小棒大であるかは理解できたはずだ。その意味でも実に「驚くべき」記事だったわけだ。ともあれ、この記事の内容を簡単に紹介すると、「三菱東京UFJ銀行が日本国債の価格急落に備えた『危機管理計画』を初めて作ったことがわかった。国債の有力な買い手がいよいよ『急落シナリオ』を想定し始めた」というものだ。内容だけを見ると、鬼気迫るものがある。
ところが、である。ある銀行の企画マンはこう失笑する。
「あれならば、当行のみならず、全国の金融機関がやっています。ALM(資産・負債総合管理)の一環として、毎月、幾通りもの金利シナリオを作りますから。もちろん、いつでも国債の暴落シナリオはありますし、その対処の仕方も検討しています」