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経済

《クローズ・アップ》平野信行(三菱東京UFJ銀行次期頭取)

内向き経営に拍車かける穏健派

2012年3月号

三菱東京UFJ銀行は、最大母体である旧三菱銀行以来、常に本命視された人物を頭取に仕上げてきた。よく言えば、ブレない。悪く言えば、面白みに欠ける。

 今回も「本命」の登板である。もちろん、ダークホースの存在も囁かれていなかったわけではない。米州本部長の田中正明常務である。両氏はともに企画畑で、国際経験が豊富という共通点がある。ともにプリンスと位置づけられていた。ただし、人柄はきわめて対照的。田中氏は「悪太郎」の異名を取るほどの豪腕派で知られている一方で、平野氏は行内では誰もが認める「穏健派」だ。

 この相違が今後最も反映されるに違いないと行内で噂されたのが人事だった。平野氏がバランス型の人事を踏襲すると予想されているのに対して、仮に田中氏が頭取となれば、母体の旧三菱優先人事に走るとみられていた。裏返して言えば、旧UFJ出身の経営陣のポストが奪われかねない――。そんな「噂」が頭取人事の行方に絡んで行内でまことしやかに流れていたのだ。「旧UFJ出身者に平野歓迎ムードが強い」(ライバル銀行幹部)のはこうした伏線があったからとも言える。 
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